特殊鳥類とは、わが国において絶滅のおそれがある鳥類のことです。 絶滅の危機に瀕している鳥獣の保護に関しては、1918年の「鳥獣保護及狩獣ニ関スル法律」以来、政府としての保護措置が講じられていましたが、1972年に「日米渡り鳥条約」(正式名称は「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」)が調印されると、これを機に、その保護をいっそう強化するための法律として、同年、「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」が制定されました。(同法は、1992年に「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」とともに、「種の保存法」へと統廃合され、現在にいたっています) 「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」のポイントは以下のとおりです。 ①特殊鳥類又はその卵は、環境庁長官(当時。以下同)が認める例外を除き譲渡譲受等を禁止する。 ②特殊鳥類又はその卵は、国際協力として学術研究、養殖を行なう場合、その他輸出することが特にやむを得ない場合であって政令で定める要件に該当する場合を除き、輸出してはならない。 ③なお、要件として本邦における種の保存に支障がないことを含めて、環境庁長官の認定が必要。 ④特殊鳥類又はその卵は、輸出国の輸出許可書又は適法捕獲証明書を添付したものでなければ原則として輸入してはならない。 こうした時流に沿って、1974年から発行が開始された「自然保護シリーズ」では、1975年から1976年にかけて、アホウドリ、タンチョウ、ハハジマメジロ、アカヒゲの4種の切手が発行されています。 その後、1981年に山科鳥類研究所によって、沖縄県で地元の人々にアガチ、アガチャ、ヤマドゥイ等の名で知られていたクイナ科の鳥が新種、ヤンバルクイナとして発表されると、これを機にヤンバルクイナ・ブームが到来。特殊鳥類に対する一般の関心が飛躍的に高まりました。 こうしたことを受けて、1983年9月から1984年6月にかけて、郵政省(当時)は「特殊鳥類切手シリーズ」として10種類の切手を発行しました。シリーズに取り上げられた鳥は、以下のとおりです。 第1集(1983年9月22日発行) ヤンバルクイナ、シマフクロウ 第2集(1983年11月25日発行) ノグチゲラ、シジュウカラガン 第3集(1984年1月26日発行) オオセッカ、カンムリワシ 第4集(1984年3月15日発行) アカガシラカラスバト、カラフトアオアシシギ 第5集(1984年6月22日発行) オーストンオオアカゲラ、シマハヤブサ 切手の原画は、いずれも、郵政省のデザイナー(技芸官)の森田基治が作成しました。森田による写実的なデザインは切手収集家の間でも高い評価を受け、シリーズ完結後の1984年12月10日には、シリーズの中のシマフクロウ、カンムリワシ、シマハヤブサの3種類を凹版印刷のみで再現して組み合わせた小型シートも発行され、好評を博しています。 内藤陽介(ないとう・ようすけ) 1967年東京都生。郵便学者、(財)切手の博物館・副館長。日本文芸家協会会員。切手や郵便物から時代と社会を読み解く執筆・講演活動を行っている。 香港政府観光局推薦の『香港歴史漫郵記』(大修館書店)他、著書多数。 内藤陽介のブログ: http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
【凡例】
ヤンバルクイナ
シマフクロウ
ノグチゲラ
シジュウカラガン
オオセッカ
カンムリワシ
アカガシラカラスバト
カラフトアオアシシギ
オーストンオオアカゲラ
シマハヤブサ