1960年代の高度経済成長の副作用として、公害や自然環境の破壊が問題視される中で、1971年7月に環境庁(現・環境省)が発足。さらに1972年6月にはストックホルムで国連人間環境会議が開催されたこともあって、郵政省では自然環境保護をテーマとした切手の発行を検討するようになります。 当初、郵政省では、当初は昭和49年度以降、日本に生息する貴重動物を紹介する「動物シリーズ」の発行するよう準備を進めていましたが、この時期に発効した日米渡り鳥条約ならびにほぼ同時期に調印された日ソ渡り鳥条約および日濠渡り鳥条約の記念切手に代わるものとして、急遽、動物シリーズの第1集として準備されていたイリオモテヤマネコの切手が、昭和48年度末ギリギリの1974年3月25日に「自然保護シリーズ」の第1集として発行されることになりました。 以後、自然保護シリーズは1978年7月25日にコマクサ(植物)の切手が発行されるまで、全20種類にもおよぶロング・シリーズになりましたが、このうち、1975年1月16日に発行の第5集から翌1976年2月27日に発行の第8集までの4種類に鳥類が取り上げられています。 鳥類切手の題材は、山科鳥類研究所、日本野鳥の会、環境庁などの鳥類研究・保護団体の代表者と郵政省との検討により決定されたもので、最初の1枚は、鳥類画家の薮内正幸の原画によるアホウドリです。 次いで発行されたのはタンチョウです。タンチョウは瑞鳥として、これまでにも切手や葉書にたびたび取り上げられていたため、これまで切手に取り上げられていない種を優先するという自然保護シリーズの際財選択の基準からすると、本来なら切手に取り上げられない公算が高かったのですが、1974年4月30日、自然保護シリーズの種類選考の鳥類関係委員会の席上、出席したある委員から「北海道のタンチョウは世界のタンチョウの主群である。過半数は勿論、若しかしたら80〜90%に当る数かも知れない。これは外国の鳥類学者も認めている。それで日本がその保護に力を入れていることを、この際世界に知らしめる意味でも、是非このシリーズに加えられたい」との発言があり、これが容れられるかたちで切手としての発行が決定されました。 その後、ハハジマメジロとアカヒゲが順に切手に取り上げられましたが、当初、1975年11月に発行される予定だったアカヒゲは、1976年1月に郵便料金が値上げされることが決まったため、料金改正後の1976年2月27日、50円切手(他の3種は20円切手)として発行されています。 なお、自然保護シリーズの詳細については、内藤陽介著『沖縄・高松塚の時代』(日本郵趣出版)もご覧ください。 内藤陽介(ないとう・ようすけ) 1967年東京都生。郵便学者、(財)切手の博物館・副館長。日本文芸家協会会員。切手や郵便物から時代と社会を読み解く執筆・講演活動を行っている。 香港政府観光局推薦の『香港歴史漫郵記』(大修館書店)他、著書多数。 内藤陽介のブログ: http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
【凡例】
アホウドリ
タンチョウ
ハハジマメグロ
アカヒゲ