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芸術の秋、運動の秋、食欲の秋…皆さんにとっての秋は何でしょう? 鳥にとっては「渡りの秋」。身近な緑地では夏鳥や旅鳥が翼を休めているかもしれません。今回は昼間に渡りが観察できる「ヒヨドリ」から、「なぜ」の世界にご案内します。
身近な鳥にだってナゾがある

イラスト/小島早恵 |
ひなこ(以下ひ)最近、ヒヨドリがにぎやかになってきたと思わない?
安西(以下安)夏に子育てを終えてから羽が抜け替わるまでの間は、わりと静かだったのにね。
ひ秋には新しい羽をまとって、渡るヒヨドリもいるんだよね。
安1年中見られるから、渡るって知らない人も多いけど、海岸の岬なんかに行くと、群れになって海上を移動するのが見られるよ。
ひそれにしても、こんな身近にいるのにヒヨドリも謎の多い鳥だと思うわ。さえずりがはっきりしないし、オス・メスも見分けにくいし、多くの小鳥と違って昼に渡りをするし…。今ここで休んでるのだって、どこからかもう渡って来たのかもしれないよね。
安ヒヨドリだけじゃない。スズメやカラスだって「どんなオスがもてるのか」「親離れした子どもは、いつどこへ移動するのか」などわかっていないことの方が多いんだ。
ひそういえば、今はオオルリやキビタキといった夏鳥たちが、東南アジア方面を目指している季節でしょ。「身近な公園でも渡り鳥たちと出会える時期よ」ってお母さんに話したら、「鳥ってなんで渡るの?」って聞かれて困っちゃった。
安そりゃ困った。僕だって答えようがない。
ひ鳥がどうして渡るのかもわかってないの?
安そうだなあ。その質問に応じる前にひとこと。野鳥は地球上におよそ1万種、つまり1万通りのくらし方があるってことをまず頭に入れてね。
ひ種によって、すみかや食べ物など、くらし方が違うから無駄な争いなく共存できるんだよね。
安渡り鳥にもいろいろいるでしょ。渡りだってさまざまだから、一概には言えないという前提で、渡るワケを夏鳥と冬鳥に分けて考えてみようか。
渡るワケは食べもの次第?
ひたとえば夏鳥の代表、ツバメは、飛んでる虫を食べる鳥だから、冬もエサがある南の国に渡るんじゃない?
安渡るワケとして、確かに食べものによるところは大きいだろうね。ツツドリやカッコウなら大きな毛虫を好むから日本では冬を越せないというのも説明できる。
ひこれから渡ってくるハクチョウやカモといった冬鳥は、春夏はシベリア方面で子育てしてたんでしょ。冬は寒くなってエサがなくなっちゃうから日本に渡ってきて過ごすってことは、わかるわ。
安でもね、春にまた北上するのは何のためって説明できる? ツバメなら南の国にいれば、飛んでいる虫は1年中いるはずだよ。
ひなんでまた海を越え、危険をおかしてまで日本に帰って来るんだろう?
安鳥はよく食べる生きもの。例えば小鳥1羽が1年間生きていくのに何万、何十万という虫が必要って話を前にしたことがあるけど、子育てにはもっとたくさんの虫が必要になる。
ひ鳥の子育ての原則は「短期集中、子だくさん」だもんね。それじゃ南の国より日本は虫が多いってことになるのかな?
安四季がはっきりしてる北の国の方が、春夏に集中して虫が発生するってことは考えられるよね。それに南の国で子育てする鳥たちとの競合が避けられるんじゃないかな。命を落とす危険があるのにわざわざ渡って子育てするってことが鳥にとって有利でなければ、今の彼らはないはずなんだ。
知られざるを知る
ひわかってないことが多くても、考えられることはあるのね。
安ヒヨドリにもいろんなのがいるように、同じ種でも地域や季節、雌雄や年齢によってくらし方に違いがありそうだよね。鳥たちの世界は単純じゃないし不思議がいっぱいなんだけど、「どうやって子孫を残してこられたのか」っていう視点から推測できることはある。
ひ調べたり、想像したりするのもバードウォッチングの楽しみよね。さっきの話に戻るけど、ヒヨドリが渡るワケは、何か推測されてることがあるの?
安スズメの場合、秋に移動するのは若い個体が多いので、分散によって近親交配を防ぐ意味が考えられる。ヒヨドリも年齢が関係してる可能性はあるけど、冬の生活ではその地域で木の実がなくなると移動することがわかってきた。
ひふーん、ワケといっても一つではないかもね。

イラスト/加藤明子 |
安「知られざるを知る、これ知るなり」って言うでしょ。
ひそうね、私たちはいつの間にかいろんなことがわかってると思いこんでるのかもしれないわ。
安思いこみはこわいよ。スズメとカラスしかいないと思ってると、いろんな鳥に気づくことができないし…。
ひ「わかってる」と思ってると不思議に気づかないし、巣立ちビナを迷子と決めつけて拾ってきたりとか…。
安それに、自然環境の保全を考えるとこれまでの生活を見直さなくてはならないんだけど、「知られざるを知る」ことで、謙虚になれるし、きっかけを得られると思うんだ。さらに、種ごとに違いはあるけど、いろんなつながりがあることは確かだから、それぞれがよくわかっていないからこそ、自然全体をできるだけまとまりとして守る必要性を導くことにもなる。
ひもっとたくさんの人が、鳥の世界の不思議に気づくようになればいいね。
企画・文/安西英明・中村聡(普及室)
注)NOTE61からバードウォッチング案内人研修会のテキスト第3章「バードウォッチングの基礎」に関連して、野鳥の見方、楽しみ方についてのお話です。
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