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ワーイ、夏休み!皆さん旅行の予定はありますか?私は友達と沖縄に行きます。安西さんに旅行ついでにバードウォッチングができないか聞いてみたら、身近な鳥でも細かく見ると、地域によって亜種の違いがあるんですって。
早くも渡り
ひなこ(以下ひ)
最近、さえずりが静かになってきたわ。
安西(以下安)
子育てが終わりつつあるってことだよね。シギの仲間では渡りも始まっているし。
ひ
えっ、春に北上したと思ったら、もう南下して来るの?
安
8月に入ると、日本の干潟は彼らでにぎわいだすよ。
ひ
旅鳥って「春と秋に日本を通過する」って聞いたけど、シギは夏からなのね。
安
シギは北極圏で子育てするものが多いんだけど、鳥たちの子育ては北に行くほど短期集中になる傾向があるんだ。
ひ
夏が短いから?
安
そう。短いだけに、子育ての餌となる虫などがより集中して発生する。ツバメが南の国から日本まで北上して来て子育てをするのも、同じ理由が考えられる。四季がはっきりしない南の国では、虫が集中して発生する季節がないからね。
ひ
そっか、南の国にずっといれば楽なのにって思ってたけど、短期間の子育てだからこそたくさんの虫が必要なんだものね。
亜種−同じ種でも地域によって
ひ
私も今週、南下して沖縄に行くんだ。観光ついでに鳥も見たいんだけど。
安
南西諸島ではキジバト、コゲラ、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラなど身近な鳥でも、本土のと違うから見てごらん。
ひ
同じ種でも違うの?
安
じゃあ、おさらい。『新・山野の鳥』では「種」をなんて説明してる?
ひ
「1つの種は同じ形態とくらし方を持ち、遺伝的に独立している」。遺伝的に独立って何だっけ?
安
簡単に言うと、同じ種では結婚して子孫を残せるけど、違う種の間では結婚したり子孫を残すことができないってこと。
ひ
「種」をさらに分けるのが「亜種」だっけ。
安
そう。同じ種でも地域によって大きさや色に違いがある場合だったね。
ひ
でも、野外では亜種までわからないことも多いんでしょ。
安
うん。ただ、南の諸島部や北海道では、見分けやすい亜種がいるんだ。
ひ
うーん、身近な鳥でも日頃よく見て、違いに気づいて来いってことね。
安
どうせなら、姿かたちだけじゃなく、声とか習性にも注目してほしい。例えば沖縄のヒヨドリ(亜種名リュウキュウヒヨドリ)は声が細くて、本土のヒヨよりシャイな気がする。
個体差−同じ種でも個体によって
ひ
亜種に分けるってどういう意味があるの?
安
生物の多様性の保護について「生態系、種、遺伝子という3つの側面がある」という考え方があって(※1)、種をさらに分けることは種内の多様性、つきつめれば遺伝子の多様性を考えることになる。亜種なら生息地域による遺伝的な違いが姿かたちに反映されていると捉えられる。
ひ
遺伝的違いって?
安
例えば、ほ乳類の霊長目ヒト科のヒトという種にも、いろんな人種や民族がいるでしょ。
ひ
同じ人種でも体格や性格も皆違うもんね。
安
鳥も同じ種の中で、姿かたちや習性は雌雄や年齢でも違う場合がある。さらに亜種による違いや、個体による違いもある。個体によって遺伝子は100%は同じではないからね。
ひ
そういえば、お母さんが冬のエサ台を見て「同じシジュウカラにも個性がある」って言ってたっけ。気が強いのとか弱いのとか。
安
それは個体識別になるね。これまで見分ける楽しみの話は種を単位にしてきたけど、さらに細かく見分けられるってこと。調査研究では個体を見分けるのは重要。コゲラの背中の模様の違いからペアの他にもう1羽ヘルパーがいるらしいことを調べた事例(※2)もあるし、スズメでチャレンジしている人もいるよ。
ひ
スズメ? みんな同じに見えるよ〜。
安
のどやあごの黒斑の大きさや形は、1羽ずつ微妙に違うらしい。
ひ
バードウォッチング案内人は、そういうことも伝えた方がいいの?
安
スズメがホオジロやヒバリと区別できることが先なんじゃないかな。見分けるだけが楽しみじゃないし、感性で楽しむこともできるんだから。
ひ
でも、やっぱり名前がわかると楽しいし、生物多様性ってよく聞くけど、いろんな種がいるって分かることが自然保護につながるんじゃない?
安
確かに保護を進めるのに、分類の基本単位である種のレベルがわかる必要がある。地域個体群を守る上では亜種、年齢や渡りのルートを調べるには個体識別も必要になる。だけど、細かな話より命のつながり、自然のしくみを知ってもらうほうが先だと思う。生態系の保護が十分に行われれば、結果として種や遺伝子の多様性の保護もなされることになるからね。
企画・文:ネイチャースクール
※1 樋口広芳 『Strix』vol.13
※2 山上信雄 『Strix』vol.11