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私の街にもツバメのオスがやって来て「土食って虫食ってシブーイ」とさえずり始めました。早くもメスとペアができるといいな。今回はさえずりと森との関係のお話。結婚シーズンにさえずる鳥、さえずらない鳥がいるけど、さえずる小鳥は森に多いんだって。
オスの声?メスの声?
ひなこ(以下ひ)
あっ、ヒヨヒヨヒヨ…ってこの声、スズメの交尾の時の声だよね?
安西(以下安)
そうそう、あの屋根の上だ。小さい声なのによく気がつくようになったね。
ひ
「カワラヒワより優しい声」って教えてもらったおかげかな。
安
たとえを使ったり身近な鳥と比較するのは案内人のテクニックさ。カワラヒワのキリキリッていう地鳴きは街でもよく聞けるから、比較の対象として示せば具体的にイメージできるし、印象に残るでしょ。
ひ
あれ、まだヒヨヒヨいってる。またオスがのってるよ。
安
鳥の交尾はお互いの穴と穴※を合わせるだけだから、何回も繰り返すこともある。特に、オスとメスの意思疎通がうまくいっていない時とか、どちらかが若くてヘタな場合にはね。
ひ
ねぇ、この声ってオスメスどっちの声なの?
安
メスが出すって紹介している本があるけど、この間観察したら、どうも上にのるオスの方が鳴いてたみたいなんだ。
ひ
へぇ、これから注意してみよう。
安
交尾はいつどこで行われるのか、オスがどのようにメスに迫って、メスがどのようにOKを出すのかとか、スズメのような身近な鳥でも案外知られていないことが多い。この季節はどんな鳥でも注目だね。
ひ
さえずるのがオスってことは確かなんでしょ。
安
原則はその通り。複雑で多様な自然や生物の世界を理解するのには、まずは原則だ。ただ、鳥の世界もさまざまで、タマシギやミフウズラのようにメスが鳴いてオスを呼ぶような鳥もいるし、小鳥もまれにオオルリなどでメスが小声でさえずったという観察例もあるんだ。
さえずるのはどんな鳥?
ひ
えっ? タマシギって小鳥じゃないようね。さえずるのは小鳥が原則でしょ。
安
一般には小さい鳥を小鳥とよんでるけど、スズメ目に分類される鳥を小鳥とした場合、どんな特徴があるか前にまとめたよね(
参照/NOTE25、1999年12月号
)。
ひ
えーっと、カラスのような例外はあるけど、小さい鳥が多くて、世界の鳥の六割を占めてて…。
安
そう。スズメ目は60科、5000種を超える鳥類最大のグループ。体の構造では鳴くための器官が他のグループより多いので、多彩な声が出せる。
ひ
複雑なさえずりができるのはスズメ目に多いのね。
安
カラス科やヒヨドリ科みたいに、地鳴きにはバリエーションが多いけどさえずりがはっきりしない例外もあるけどね。
ひ
スズメ目でないのにさえずる鳥はいるの?
安
カッコウ目、ハト目、キジ目など森をすみかとする鳥に多いんじゃないかな。あとは夜の鳥。さえずりを「複雑で音楽的な鳴き方」とすると、単純な鳴き方が多いのでさえずりのイメージではないかもしれないけど、繁殖期にオスが一定の鳴き方をするという点ではさえずりと言えるだろう。
ひ
タマシギは夜行性だし、フクロウの仲間もそうよね。
安
コウノトリ目サギ科を例にとると、昼行性のコサギやダイサギはさえずりはないけど、ミゾゴイとかヨシゴイなどの夜行性の種にはさえずりと言えるものがある。
森と小鳥の関係
ひ
森でくらす鳥や夜行性の鳥にさえずるのが多いのはどうして?
安
同じ種のオスメスが出会えなければ結婚も子育てもできないわけだけど、森は葉が茂っているし、夜は暗い。つまり、お互い姿が見にくかったために、声によるコミュニケーションを発達させたと考えられるんじゃないかな。日本産鳥類の分類を表にして、さえずるもの、森に多いものをおおざっぱに科ごとにまとめてみたよ(表1)。
ひ
なるほど。さえずるのも、森にいるのもスズメ目に多いのね。
安
スズメ目は、主に森で進化したと考えられる。豊かな森は木の高さや種類がさまざまなので、環境の構造も生物種もさまざま。つまり多様な環境や食物に応じて多様な種に進化していったんだ。
ひ
『新・山野の鳥』には小鳥が小さいワケとして虫やタネが枝先に多いからって書いてあるわ。それも森と関係してるのね。
安
多様な森、森内の多様性に応じて、生活に適した姿が進化したと考えられる。スズメ目では樹上生活者が多いからね。
ひ
スズメ目の特徴のひとつ「後ろに向いた指が発達している」っていうのも木の枝で活動しやすいってこと?
安
そうだね。例外としては、地上を歩くのが得意なヒバリやセキレイとか、空中生活の専門家になっちゃったツバメもいる。
ひ
う〜ん、いろいろ例外ってあるものね。それぞれの環境に、いろんな鳥がいるっていう大原則だけは覚えとくわ。
企画・文:ネイチャースクール
※ 鳥は糞や尿、精子や卵も一つの穴(総排泄孔と呼ぶ)から出す。つまりオスからメスへの精子の受け渡しもこの穴を合わせることで行う。