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先月、“誰でも案内人になれる”って言われて、がぜんはりきっちゃっているひなこです。野鳥を大切に、人の気持ちも大切に、自分なりにがんばっていきたいな。今月号からは、安西さんに、バードウォッチングを楽しみながら案内するコツも聞いていきます。
子育てシーズン真っ盛り
安西(以下安)
あっ、スズメが交尾してる。
ひなこ(以下ひ)
本当だ! 上に乗った方がオスね。でも、どうして気が付いたの?
安
スズメの場合、交尾する時に普段は出さない声を出すんだ。ピイピイピイってね。他の鳥でもメスが姿勢を低くするなどして受け入れOKサインを出すから、注意して見てると交尾に気付くよ。何しろ子育てシーズン真っ盛りだから。
ひ
五月にスズメの巣立ったヒナを見たわ。今頃交尾してるのは遅いんじゃないの?
安
スズメ、シジュウカラ、ツバメなどは、春から初夏に繁殖を繰り返すんだ。順調に5月に子どもを巣立たせた親たちは、6月には2回目の繁殖に入る。
ひ
小鳥の親も大変ね。…あっ、カルガモの親子だ。ヒナが1、2、3…10羽もいるよ!
安
カルガモは草地で卵をかえして、ヒナを水面に連れ出すんだ。あれだけの数のヒナを連れているのは、卵からかえって間もない頃だろうね。
ひ
ちょっと待って、ヒナの数から時期がわかるの? だんだん減っていくってこと?
安
うん。だって、子だくさんのカルガモの赤ちゃんがみんな育ったら、カルガモだらけになっちゃうよ。
生き残れるのは何羽?
安
地球上で現在確認されている野鳥はおよそ9000種類。ちなみに虫は180万種とか言われているけど、少なくともこの星には何千万という生物種がいるらしい。
ひ
生物の種も、まだほんの一部しかわかっていないのよね。
安
の通り。ただ鳥は高等動物で研究が進んでいる方だから、化石で新しい種が発見されることもあるけど、現在の種の数は分類方法によって変わる程度だと思う。それはともかく、なぜ9000種もの鳥たちがこの星で共存しているかというと…
ひ
えーと、ひとつには種によってくらし方が違うから、争いが避けられているってことよね(参照/
NOTE16「地球ってすごい!」
『野鳥』1999年1月号)。
安
確かに。種ごとのすむ場所、時期、食べ物などの違いが多くの種の共存を可能にしてる。で、同じ種ではだいたい同じようなくらし方になるでしょ。だから、ある地域でその種がくらしていける環境や食物ってのは、おのずと限りがある。
ひ
ふむふむ、なるほど。増えすぎたら困っちゃうけど、自然界には食べる側の生物がいるから数のバランスがとれるのよね。
安
まあ、簡単に言ってしまえばそうなるね。例えば、カルガモが100羽すめる環境と食べ物があるとしよう。今年、オス50羽とメス50羽のうち、80羽が結婚できたとして、40ペアのメスがそれぞれ10羽のヒナをかえしたとしたら、何羽になる?
ひ
40羽×10羽で400羽…。えーっ! 100羽しかすめないところに100羽+400羽になったら大変だわ!!
安
もしそうなったら、すみか不足、食べ物不足で困ったことになるけど、そうはならない。まず成鳥のカルガモだって、100羽が全部生きのびることってないと思う。 仮に、1年に100羽のうち30羽が事故や捕食者によって命を落としたとすると、この地域では、30羽分がくらせる余地ができることになる。そこでさっきの40ペアに戻るけど、抱卵や孵化にも失敗が多いから、仮に40羽のお母さんのうち、30羽がそれぞれ十羽の赤ちゃんを草地の巣から連れ出せたとしたら…
ひ
100羽のカルガモがくらせる所に30羽の余地があるから、300羽の赤ちゃんのうち、生きのびていい数は30。うわ〜、10分の1しかないんだ。
安
まぁ、カルガモの平均寿命とか、死亡原因だってちゃんとわかっているわけじゃないから、乱暴に仮定の割合で数字を出しただけなんだけど、実際に毎年見ていると成功する子育ての方が少ないし、ヒナは次第に減っていくから、翌年まで生きのびて親鳥として繁殖に参加できるのはほんの一部だと思う。
ひ
そこにいる10羽のヒナのうち、1羽くらいしか生き残れないのかぁ。厳しいのね。
安
でも、その厳しさがあってこそ、特定の種だけが増えすぎないで、いろいろな種が共存できる豊かな自然が成り立つんじゃないのかな。
ひ
そっか。カルガモにしたら、子孫が絶えないように子だくさんなのかな。
安
小鳥たちが繁殖を繰り返すのもそういうことかもね。
カルガモがくらせる条件
安
実際にカルガモがくらせる環境を考えてみよう。まず、カルガモは何を食べる?
ひ
水草だよね。
安
そう。水草の豊富な浅い水辺。それから、繁殖するのに卵を抱くことのできる草地。さらに、カラスなどのヒナを襲う存在から逃げるにはヨシなどの茂みが必要だし、休むのに必要な安全な水際もいるんだ。
ひ
う〜ん、カルガモ一種でさえ、そんなにいろんな環境が必要なのね。じゃあ、いろんな野鳥がたくさんくらしていくためには、本当にさまざまな自然がなくてはならないってことね。
安
バードウォッチングの案内は、鳥が見分けられることが第1ではないって話したのはこういうことさ。1羽の命、1種の鳥に気付いてもらうこともバードウォッチングを案内する人の役目だと思うけど、自然は動物園の中ではないし、相手はカゴの鳥ではないってことの意味を考えて欲しい。
ひ
自然でくらす野鳥は、1羽や1種だけで生きているわけではないってこと?
安
そうだね。命のつながりや環境との関わりを感じること、そんな視点が、共存の星・地球のすばらしさを気づかせてくれるんじゃないかな。
企画・文:ネイチャースクール